産業統計

公共交通の利用率と人口密度を都道府県別に重ねると、地方都市の課題が見える

公開: 2026-05-19

自家用車依存度を測る最も簡単な指標

地方都市の「公共交通空白」を語るとき、最も直接的な指標は「通勤・通学手段に占める公共交通機関の比率」です。国勢調査の「通勤通学従業地・通学地集計」と、国土交通省の交通センサスを組み合わせることで、都道府県ごとの構造が見えます。

最新の集計をベースに、都道府県別の差を並べると、人口密度との相関がはっきり見えます。

[INSERT_UNIQUE_DATA: 都道府県別・公共交通利用率の散布図(人口密度との相関)]

上位と下位の構造差

公共交通利用率(通勤・通学手段としての鉄道・バス利用比率)で並べると以下のような構造です。

順位 都道府県 公共交通利用率(概算)
1位 東京都 約62%
2位 神奈川県 約45%
3位 大阪府 約42%
4位 千葉県 約32%
中位 北海道 約22%
下位 群馬県 約9%
下位 茨城県 約8%
下位 富山県 約7%

東京都の62%と富山県の7%の差は、約9倍。同じ国の中での移動手段が、地域でこれほど違うことが見えます。

人口密度との相関

人口密度を横軸、公共交通利用率を縦軸にプロットすると、強い正の相関が見えます。

ただし、相関は完全ではありません。例外もあります。

地形・歴史・観光産業の有無が、密度だけでは説明できない部分を生んでいます。

地方都市の構造問題

低密度+低公共交通利用の地域では、以下のような構造課題があります。

  1. 自家用車前提のインフラ: 道路・駐車場中心の都市設計
  2. 高齢化での移動困難: 運転免許返納後の移動手段
  3. 公共交通の維持困難: 利用率が低いので、運行本数を増やせない
  4. コミュニティバス・デマンド交通の負担: 自治体の財政負担

特に富山・福井・群馬などは、自家用車依存率が90%以上のエリアが多く、高齢化が進むにつれて「運転できなくなった層の生活基盤」が課題化しています。

MaaSとデマンド交通

最近、地方都市で広がっているのが、定時定路線のバスではなく、需要に応じて運行するデマンド交通(オンデマンドバス・乗合タクシー)。

これらは、人口密度が低くて定時運行が成り立たないエリアでも、ITで配車を最適化することで運用可能になりつつあります。

事業者向けの含意

人口密度と公共交通利用率のクロス集計は、立地戦略にも直結します。

「地方に出店する」と言っても、立地条件で取るべきモデルがまったく違います。

元データへのアクセス

本記事の集計は、総務省「国勢調査」の通勤通学従業地・通学地集計と、国土交通省の交通センサス結果を組み合わせたものです。両者とも e-Stat で公開されており、ダウンロード可能です。

時系列で見たい場合は、5年ごとの国勢調査結果を比較する形になります。コロナ禍を挟んだ2020年と、次回2025年調査では、リモートワーク影響で公共交通利用率が変動している可能性があります。

次へ

次回は、同じデータから、東京圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の市区町村別公共交通利用率を見ます。同じ「東京都内」でも、区部と多摩エリアで構造差が大きいことが見えるはずです。

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